喜多川 泰 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2009-02-18
仕事やバイトでくたくたに疲れた帰り道、イヤホンで聴く音楽はミドルテンポで心を揺さぶるようなメロディ。いつの間にか自分の人生を振り返って、決して摑まえることのできない何かを思いながら、ぼんやりと夜空を見つめるような、そんな時間。
この時間自体が無駄だと主張したいわけではないが、このような時間ばかりが人生を占めると、そこには何の意味もない空虚な記憶だけが残るような気がするのも確かだと思う。この時間は一体僕たちに何を与えたいのだろう。自分が過去に置いてきた後悔だろうか。いや、僕はこう思う。これから先、後悔しないための潜在的な意識から出された警告だと。Twitterでたまに見かけることがあるこんな文章。「今を、未来からタイムスリップしてきた自分が経験していると思えば、後悔ない人生を過ごそうと必死になれるはず」。これも狙いとしては、前者と同様のはずだ。
本書は二部構成になっている。第一部は、とある男が自分の夢を語りながら、遂にはそれを達することがないまま引退を迎えてしまう。第二部では、第一部の話を読んだ上京目前の学生が、第一部の話の意図を読んで、これからの生き方について考えている。つまり、人生がどのように転んでしまうのかを物語として読むことで、ひとつの後悔を自分事のように感じた後、これからをどう生きていくべきなのか考えることができる構成になっているのだ。
その第二部では人生における五つの教訓が提示されているので、それを簡単に紹介したい。
①他人との比較で幸せを図るな。
自分がどうなりたいのかを大切にしなけらばならない。多くの人は、人と比べたときに自分が欲しいものやなりたいものを見つけるが、これに縛られてはいけない。自分が目指しているものは何なのか。自分が何をしているときが一番幸せなのかを考えて、それに関係ないものに縛られないように意識する必要がある。
②今ある安定が将来まで続くと思うな。
本当の安定というのは、自分の力で変えられることを、変えようと努力しているときに得られる心の状態を指している。何かにしがみついて何事もない時間を過ごしている状態は、実は安定していない。それに頼っているだけだからだ。つまり、頼っているものが崩れ落ちた瞬間に自分の安定は容易く崩れてしまうのだ。
③成功とは金持ちになることではない。
お金が成功の指標ではない(もちろん、それを指標に据える人を除く)。成功する人は、今この瞬間からでもやりたいことを始められる人であり、自分自身の幸せの状態を理解して、そのために行動した結果、成功している人を指すのだ。だから、家族を一番大切にする人が、毎日定時で帰宅して、家族全員でご飯を食べることを優先して実現できているのであれば幸せだろう。このような成功を収めるためには、時間の投資が大切である。ただし、この投資が自分の目標に対して最短ルートの投資になっているのか常に振り返る必要がある。
④お金を稼げることの中からやりたいことを見つけるのをやめる。
これは僕が最も心に響いた教訓かもしれない。昔は自分のしたいことをとにかく考えていた。しかし今は、自分のしたいことがお金になるのかが不安で行動に移せないでいたりする。でも、それはまだ見えていないマネタイズの方法を諦めているだけかもしれない。それに本当に好きなことであれば、ダブルワークや趣味として初めて、そこから仕事にできるのかを考えても悪くはなさそうだ。まずは自分の欲求と向き合ってみることが大切なのだろう。
⑤失敗しない生き方をするという考え方をやめる
そもそも失敗とは何なのだろうか。周りが評価する失敗という烙印をみんな強く意識しすぎなのだろう。でも、本当の失敗は自分自身が失敗だと思うことである。楽天の三木谷が「成功するまでやり続ければ失敗ではない」と言っていた。これが真実なのかもしれない。目標に向かって何度も挑戦し続けること、周りの評価ではなく、自分自身の評価軸を持つことを大切に行動することが大切なのだろう。
さて、望んでいるだけは何も大切なものは得られないのだと改めて気づかされた。そして、行動すること自体に何か楽しくなる要素が隠されているのだということを思い出すこともできた。これからは、自分が苦手だとかできないかもしれないと思うことにどんどん挑戦していきたいと思う。そうやって乗り越えた壁の数だけ自分は前に進めるし、その壁を乗り越える瞬間が楽しさにつながると思うからだ。
〇読後のおすすめ
本書のように自分の考え方に変化を起こして行動する楽しみを得られるのが(いわゆる)自己啓発本の良さになる。いくつもの本を読んで行動し、自分の成長につなげたい方におすすめの本を紹介しておく。