2018-06-23 顔 FACE(横山秀夫)を読んだ感想・書評 小説 顔 FACE (徳間文庫) posted with ヨメレバ 横山 秀夫 徳間書店 2005-04-01 Amazon Kindle 楽天ブックス この葛藤は、物語を動かす一つの原動力になっている。しかし、その葛藤に解決の道があるとは限らない。事件の解決によって、平野自身に決意や考え方の変遷が見受けられるシーンもあれば、事件とは別に生じた葛藤に対して解決策を与えないまま終えている短篇もある。読み手としては、なんだか苦しいような想いがある。組織自体が偏った存在なだけで、彼女たちはその中で真っ当に生きているからである。 組織に縛られない生き方が、徐々に浸透しつつある。インターネットの登場で、破壊的とも評されるサービスが次々と登場した。結果的に流れに乗り切れなかった会社は次々と倒産した。今も、大企業だから大丈夫という確証はない。政府も副業を斡旋する時代になった。この考え方自体は、そう悪くないと僕は思っている。やはり、主体的に生きるべきは人であって、組織ではないと考えているからだ。しかし、警察組織は、そう言い切れないのかもしれない。強烈なビジョンと忠誠心が求められる。警察官で生きるということは、一般的な生活と距離を取る必要がある場面も求められる。今の企業に求められている個の尊重をそのまま横流ししてもうまくいかないだろうと思う。 本書でも警察組織の中で生きるが故に求められることを固く誓う警察官が多数登場する。特に、嘘をつかないで事実を強調することの大切さは印象的だった。それ故に反している人間に対する嫌悪が強くなるし、守り抜いて潔く生きた人間に対する賛辞も強くなる。本書でもそのように生き抜いた警察官の退職シーンが印象的だった。さて、平野はこの組織の中でどう生き抜くのだろうか。 〇読後のおすすめ 陰の季節 (文春文庫) posted with ヨメレバ 横山 秀夫 文藝春秋 2001-10-01 Amazon Kindle 楽天ブックス 顔 FACE (徳間文庫) posted with ヨメレバ 横山 秀夫 徳間書店 2005-04-01 Amazon Kindle 楽天ブックス