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陰の季節(横山秀夫)を読んだ感想・書評

 

陰の季節 (文春文庫)

陰の季節 (文春文庫)

 

 

 横山秀夫のデビュー作である「陰の季節」を読み終えた。横山秀夫といば、警務部にスポットを当てた警察小説が有名な小説家で、本書でもその特徴が存分に発揮されている。また後の横山秀夫最大のヒット作となる「ロクヨン」の舞台となるD県警は本書でも描かれているので、興味を持った人にはぜひ読んでいただきたい。

 上述したように横山秀夫の作品は刑事ものという枠にとらわれない警察小説であり、いわゆる管理部門に焦点を当てた、内部的な事件の解決が主となることが多いように思える。特に本書はその色合いが強くて、内部的な問題を世間に知らせないために、もしくは自分の管轄外に漏れないように働きかける場面が何度も出てくる。これらの背景から横山秀夫作品では心理的な葛藤や駆け引きが事件の流れを大きく作用することが多々ある。僕個人が思うに、おおよそのストーリー展開は世の中で語られているし、小説という媒体の良さを出すためにも登場人物の心理的な動きをしっかりと追う横山秀夫の小説を僕は好きだ。それが普段はあまり関わることができない警察内部の人間なのだから尚更面白い。

 最後に一つ。僕は小説の中でも、ある舞台をもとに書かれた短篇小説が大好きだ(連作ものとかも含む)。しかし近年、短篇を扱う新人賞は減少傾向にある。それ故に短篇を頻繁に執筆する小説家の数も少なくなってしまったように思える。ネットという媒体もあるが、個人的には賞金が出て、賞と編集の指導がつく出版社による短篇小説の新人賞がもっと充実すればいいのにな、と思うのだ。

 

〇読後のおすすめ

 

64(ロクヨン) 上 (文春文庫)

64(ロクヨン) 上 (文春文庫)

 

  横山秀夫最大のヒット作だろう。本書でも「陰の季節」で描かれているD県警が舞台で、エースの二渡も登場する。上下巻の長編小説で、そのリアルな描写に触れていると、この出来事が実際にどこかで起こっているのではないかという錯覚を起こしそうになるほどだ。

 

 すでに「ロクヨン」を読了している方に向けた記事である。

 

陰の季節 (文春文庫)

陰の季節 (文春文庫)