わたしは課題の解決方法は二つに分類できると考えている。①着実な解決、②イノベーションによる解決、この二つだ。前者は、しっかり課題を定義して、自分たちのリソースでできることを探っていくタイプ。後者は、ミラクル思考で「これがあれば解決できる!」と考えるようなタイプだ。もちろん後者でも的確に課題を捉えたうえでイノベーションを狙うこともあると思うが、ここではそのように分類させていただく。
この考え方によると本書は前者に分類される。的確に課題を捉えて、問題解決を図ろうとしており、教科書として企業に配布してもよいのではないかと思った。
最初に「着実な解決」と述べたとおり、本書では、「where→why→how」の順番で課題解決を考えることを大切にしている。よくある、「こういう方法でやってみよう!」と挑戦して、全く成果につながらないことを防ぐためだ。これを本書では「how思考」と呼んでいる。方法論でばかり問題解決を考えようとするタイプだ。そうではなく、最初に問題の箇所(where)を捉え、なぜ発生しているか(why)を特定したうえで、自分たちのリソースに沿った解決方法を考えるべきなのだ。
さて、問題の発生個所を特定する方法は、本書を読んでいると大きく二つの方法があるように思える。①仮説思考による特定、②meceを駆使した特定。仮説志向による特定は、how思考に陥らないように気を付けながらやる必要がある。考えた施策が原因と課題に効いているのか振り返ることが必要である。meceによる特定は、フレームワークなどを駆使して全体から絞るように考える必要がある。ある箇所に特定されてきたら感度がよい絞り込みができているということだろう。逆に何も見えないのであれば、絞り込みが甘いか、meceの組み方が間違っている。
結局、特定方法の①と②は、どちらも必要になる要素な気がする。分類して、それぞれの考え方を理解したうえで、どちらも大切にする必要があるのだろう。そのためには仮説思考の考え方やロジカルシンキングの考え方をしっかりと復讐しておくことが必要だと思った。
このようにして問題のwhereを考えたら、その論拠を端的に考える必要がある。なぜその課題に対して、そのwhereを設定するのか、だ。ここで、なぜなぜ分析をするのは危険らしい。なぜなら、なぜなぜ分析をすると、課題の原因を考えようとしてしまうので、考え方がwhyに寄ってしまう危険性があるからだ。そうではなく、ここでは、その課題に対してそのwhereを設定する理由を考える必要がある。ここでは、詳細な打ち手を考えられなくてもよい。この後why→howの流れで詳細な特定と対策を検討するからだ。
why(原因分析)で避けなければならないことが、二点挙げられていた。①コインの裏返し。これは、パソコンの利用率が落ちているという問題に対して、パソコンの普及率を高めてみたり、無理やり利用させるようなことをやめようということだ。 ②下位レイヤーの課題を避ける。例えばロジックツリーを使って発生している問題の原因を考えたときに、上位レイヤーにある問題を解決すれば、自然と下位レイヤーに存在する課題は解決されたことになるはずだ。そのようにできるだけ上位層の課題を解決したい。
さて、このように整理していくことで、やっと「問題」が「課題」として認識できるようになる。自分たちが漠然と抱えていた問題が、明確な課題になり、どのように行動していくか計画に落とし込めるようになる。ちなみに、この課題には「発生型」と「設定型」の二つが存在する。発生型は、市場動向によって売上が低下しているようなケースで、設定型は、自分たちで売上目標を設定して、そこに至るまでの道筋を課題として設定するようなイメージか。どちらになるのかは、問題によると思う。
最後にhowで対策を考える。良い対策は、もちろん成果につながるものだ。本書では、それを支えるいくつかの要素が挙げられていた。whyで記述したように下位レイヤーの課題を一網打尽にできるもの、実行者にわかりやすいもの、この対策で何がどう変わるのか明示できるもの、着実に実行できるもの、だ。そして、対策には代替案が必要だ。必ずしも対策がうまくいくとは限らないのだから、計画的に動き方を考えておかなければならない。そして、代替案に移るための、評価軸の設定も不可欠だ。軸は、コスト、効果、実現性、時間、会社方針との一致、短期的成果と長期的成果どちらを求めるのか、などが挙げられる。このような対策を考えるためには、緻密な検討と他社事例の勉強が必要だなと思った。
課題を解決するためのアプローチは、世の中に無数に存在すると思う。その中から適切なものを選べる力と自分で考え出せる力を養いたいと思った。
〇読後のおすすめ
whereの特定で、この二軸思考は役に立つだろう。