斜め屋敷の犯罪(島田荘司)を読んだ感想
ホラー作品を連想させるような装丁に、たじろぎながらも読了した。
その描写は「斜め屋敷」というよりも、「断崖絶壁にある古城」といった風で、実際に読んでみた時の印象と、読む前の印象では全くその様相が違ってきた。
僕が島田荘司の小説を手にするのは三度目だ。前回は「奇想、天を動かす」を読み、涙を流した。
島田荘司の作品では強烈なキャラクターの存在や、予想だにしないトリックに毎度この感情を揺さぶられ、気がつけば最後まで読み進めていることばかりである。
今回も「読書の時間は三十分だけ!」と決めていたにもかかわらず、ラストの種明かしが気になってしまい、気がつけば取り決めを大きく上回る二時間もの間、本書を読み進めていた。
正直に言ってしまうと、犯人は想定していたとおりだった。ただ、本書に限って言えば、楽しみどころは犯人探しというよりはトリックを考えるところだろう。
屋敷を使ったトリックは圧巻で、最後に全体図を見たときに「なるほど!」と唸る感覚はなんとも心地よい。作者も注釈を入れているように、若干ご都合主義的な部分もあるが、そんなものは何ら問題ない。小説では何事でも起きうるのだ。
ただし、犯人の動機の部分は少し弱かった気もする。
最後に一気に語られたからだろうか、少し押し付けられた感じがあった。やはり僕は巧妙に隠された伏線に興奮するタイプなのだと思った。その点で「奇想、天を動かす」は僕にピッタリの作品だった。