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本を読むこと-読書から何かを学ぶためのブログ-

書評依頼お待ちしておりますm(_ _)m ※ネタバレありのブログです。

「ふる」(西加奈子)いのちについて考えることができる小説[レビュー]

 

「ふる」(西加奈子)を読み終えたので、その感想を投稿したいと思います。

 

ふる (河出文庫)

↑あらすじや商品紹介は上記の画像をクリックすると見ることができます。

 

 本作で「いのちについて書きたかった」と述べる西加奈子

 文庫版での解説では、そこに至る経緯を簡単に紹介しています。

 

 西加奈子がいのちについて書いている本作では、考えさせられるポイントが要所要所に設定されています。人が生きる環境としての「人間関係」や、そこに潜む「感情」。それらとどう向き合っていくのか。花しすなら、どうする。

 一方で、本作は花しすが主人公の物語ですが、同時に西加奈子の内面に迫る私小説のような感覚がありました。おそらく、「いきる」「いのち」といったキーワードが西加奈子の小説家として、一生をつかって考察していく命題として設定されているのでしょう。本作を考案したときや、執筆時に、西加奈子は「いのち」についてどう考えていたんだろうか、と無意識的に考えさせられる側面がありました。

 

 こんな偉そうなことを言っていますが、私が西加奈子の作品を読むのは漁港の肉子ちゃん以来の2作目です。まだまだ、語れるほどではないのですが、それだけ作者の考えを色濃く表現している本である、と感じたので、今回はたっぷり語れそうです(笑)

 

 

 さて、花しすを通して、西加奈子が描きたかった「いのち」を主題とした物語を表現している「ふる」。

 私はいくつかの共感ポイントを小説内に見つけながらも、表現が少し粗いような印象を受ける文もいくつか存在しているなあ、と思いました。おそらく、執筆時の西加奈子の「いのち」に対する感覚や想いを文章にしているものの、その感覚があまりにも抽象的であったり、未完成だったからなんだと思うんです。

 いのちに対して完璧なイメージを備えている人が、もし、いるのなら、その人の話をぜひ聴きたいぐらいで、イメージが曖昧なことは決して悪いと思ってはいません。むしろ、「いのち」という普遍的なテーマは、考える人や、日々の想いの中で、簡単に答えが変わってもおかしくないものです。西加奈子は今後も「いのち」について考えて、私たち読者に色んなカタチの「いのち」をテーマにした小説を読ませてくれるんだろうなあ、と思います。期待も込めて。

 そして、私がまだ未完成だと評する。本作の「いのち」に対する捉え方や一つの答えは、読者が各自好きなように保管することで、新しい一つの答えになるんではないでしょうか。むしろこれを狙っていたのかなーとも思います?

 

 先ほどから「いのち」をテーマとして連呼していますが、「大人と子どもの境目」や「大人になること」も西加奈子のテーマとして存在しているのではないでしょうか。

 漁港の肉子ちゃんのキクりんも、ふるの花しすも「生理現象」を通して、大人への階段を登っていることを意識します。私は男なので、正直なところよくわからない部分も、、、(それが少し本作を読んでいて寂しいところであります)。

 花しすは生理が訪れても、自分が大人のような体型をなしていないことを理由にまだまだ大人は遠いと感じます。

 また、体調不良から産婦人科に訪れた場面では医師から、子を産む適齢期を過ぎつつあるから、子を産みたいのなら急げと諭されます。

 これらのシーンから私が感じたのは、「生物的な大人」と「社会的な大人」の差です。

 生理現象が始まったということは、生物的には子孫を残す準備が整いつつあるということを表すといえます。生物的には大人と表現されてもおかしくなさそう。一方で、現代社会では生理が始まった、子どもが産める、それだけでは大人にはなれない。年齢でも決めることができるのかなんて怪しい時代です。私も、もちろん前者の考え方なんてないし、この考え方を持っている人がいれば、暴力的な表現だと批判されてもおかしくないかもしれない。

 子を産む適齢期の話にしても、それが社会の平均出産年齢やその人が思う出産したい年齢とはかけ離れているのが、現代ではないでしょうか。

 結局は自分で決めるしかないし、大人と子どもの境目なんて見る人の見方に左右されるんだから、自分らしく生きるしかない。

 また、生物的に備えられている機能と自身の人生設計に差異が生まれる今日では、自分の身体を管理しつつも、自分の意志で決める力が必要なんだと考えさせられました。

 

 その点、花しすはラストシーンで、そして祖母の介護を通して、自分らしさを備えて生きる強さを得たんじゃないかなあと思います。

 

 

ふる (河出文庫)

ふる (河出文庫)