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本を読むこと-読書から何かを学ぶためのブログ-

書評依頼お待ちしておりますm(_ _)m ※ネタバレありのブログです。

異類婚姻譚(本谷有希子)の感想[レビュー]

 芥川賞受賞作品「異類婚姻譚」を読みました。

 

異類婚姻譚

異類婚姻譚

 

 ※ネタバレを含む可能性があります。

 

 本谷有希子については正直なにも知らないまま、芥川賞を受賞したという話を聞いて、興味を持ち、読みました。

 本谷有希子が結婚後の作品らしく、内容も夫婦をテーマに扱っている物語になっています。表題になっている「異類婚姻譚」と短篇が三作あります。短篇に関しては立ち読みでもすぐに読めてしまうような文量だったので、すぐに読み終えました。それでも独特の不気味さが文章から感じられて、それが良い読み応えにつながっていると思います。

 短篇って情報量が必然的に少なくなるのですが、それが面白みでもあって、その面白みをうまく活かしていると思います。

 

 ・異類婚姻譚について

 表題にもなっている中篇作品です。

 ある日、夫と顔が似てきているような錯覚に囚われた妻を主人公に、夫婦関係の崩壊を描いた作品です。これだけ見ると意味不明かもしれないんですが、しっかり読むと何となく意味合いを理解できるのも、なんだか面白い要素なのかもしれないです。

 僕はラストシーンで夫が一気に弾けて(蒸発して)、花になってしまう描写を見て、夏目漱石夢十夜を思い出しました(笑)

 あれは狙っているんでしょうか? そして、最後に夫の花に寄り添う竜胆が元妻なのかなと思いました。この辺りは読み手の想像に任せる部分が大きいので自由に考えてもいいと思います。

 本作品の中で夫はよく「サンチャンといると楽だ」と発言します。僕もこの人といると楽だな、と感じることはしょっちゅうあります。例えばどんな人? と質問されれば、すかさず「あの人とか、この人」と答えることができるぐらいに……。でも、それって生きやすさとは別なんだろうなって僕は思っています。

 一緒にいると楽な人は、その人を楽にしてくれているけれども、その人が社会で生きやすくし続けてくれるかというと話は別なんだと思います。うまく言葉にするのは難しいんですが、人が長年かけて構築し続けようとしている社会システムの中で休息所のような役割を果たしてくれるものの、社会の中での息苦しさをあまりにも明確にしてしまうので、弱い人間はそこから逃げ出してしまいたくなるんだと思います。

 たぶん夫がそんな人間だったのかなと思います。一方で、サンチャンも夫をそんな役割に見立てていたんじゃないでしょうか。様々なしがらみの中で苦しむことになる社会(仕事)から逃れて、稼ぎのある夫のために専業主婦になる。夫は自宅で極限までダラダラしていて、主婦のサンチャンから見てもマイナス要素ばかり。サンチャンはそんなマイナスポイントを見ていくぶんか安心の思いを抱いてしまっていたのではないでしょか。あー、ここにもダメな人がいるって。

 そうやって自分たちを滅ぼしていく一つの共同体になろうとしていた。共依存の関係を顔が似ていくやらのくだりに表現として置き換えたのかなと思っています。ただ、結局は夫婦であっても隠していることなんかがあって、そこら辺が難しいんだろうなあ。正直なところ僕は学生で愛する人と生活するという結婚に大まかな期待を抱いているのだけれど、現実は甘くないのだろうか(笑)

 

・犬たち

 これは意味不明だと思った方も多そうな作品ですね。僕もよく分かりません(笑)

 ただ、感覚的に読んでも面白いお話になっているので、どことなく不気味な結末を迎える話が好きな方はぜひ読んでみて欲しいです!

 

・トモ子のバームクーヘン

 主人公のトモ子が物語の中で常に抱えている不安は僕が小学生の頃に常々抱いていた恐怖と近いものがありました。見慣れた景色が実はいつもと違うものに取って代わっているのではないか。とか、いつものあの人は、もはや違う人の魂が入り込んでいるんじゃないのか、とか。

 今、思い返すと、そんなこと考えてたら社会でやってけねえよ。ってことばっかりなんですけど、言いたいことはすごくわかります。答えの出ない社会で、もはやそんな問いかけをした人は死んでいるのかもしれない世の中で、何かを求めて生きる苦しさを表現しているのかなと感じました。

 主人公はちょっと統合失調症の患者さんをモデルにしたのかな? 妄想不安が誇大化し続けているけれども、夫に隠しているのは辛かろうに。この辺りのやり取りは本書で一貫して描かれていますね。

 

・藁の夫

 これまた不気味な話です。もう一人の自分とか言ってて怖いですが、これは夫の前で時折見せる姿ですよね。幸せそうなお嫁さんを演じるような性格を別人格と読んでいるのでしょうか。

 面白いのは夫の体から楽器が溢れてくるシーンですね。関係性崩壊の足音のようなものを体から溢れ出る楽器で表現しているのでしょうか。おもしろいな、と思いました。

 

 個人的に本谷有希子の作品はツボだったので、次は大江健三郎賞を受賞した下記の作品を読んでみようかと思っています。あとは、芥川賞を同時受賞した「死んでいない者」ですね。たのしみ。

 

嵐のピクニック (講談社文庫)

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