A(中村文則)を読んだ感想・書評
静かな炎天(若竹七海)を読んだ感想・書評
最後の医者は桜を見上げて君を想う(二宮敦人)を読んだ感想・書評
いつか、すべての子供たちに(ウェンディ・コップ)を読んだ感想・書評
ここまでの何年かで私が行った選択に関しては、あまり後悔することはできない。当時の私が私であったことからは逃げられないし、そのときの経験があったからこそ、いまの私なのだ。仮に、新しいアイデアを実行に移す前に資金を確保する必要があると当時から認識していたとしたら、そもそもティーチ。フォー・アメリカは誕生していなかっただろう。
反省はしてもいい。でも、最初に思った根本的な欲求や思いは、決して忘れないようにしたい。そう思わせる文章だ。
○読後のおすすめ
直撃 本田圭佑(木崎伸也)を読んだ感想・書評
本田は腕に巻いたストップウォッチを押すと、ゆっくりとジョギングを始めた。ピッチの外側を回りながら、10分間、スピードを上げることなく、落とすことなく、一定のペースで黙々と走り続けた。
「練習前に、必ずやっていることなんですよ」
汗をぬぐいながら、本田は”習慣について“説明した。
「何気ないジョギングですけど、10分が早く終わったなと思うこともあれば、まだ10分にならないの? と思うこともある。つまり自分のコンディションを計るパロメーターにしているんですね。1から10まで段階をつけて。それに応じて練習時の追い込み方を調節するようにしている」
ここにルーチン化の醍醐味があると思った。特に体調が影響する職業だから、このようなルーチンが役に立つのだろうけど、ビジネスマンやその他の職種にだってこのような自分を測る基準があってもいいと思う。
「だって、人生は上がるか、落ちるかのどちらかでしょ。安定っていうのは横棒の状態のことを言ってるんでしょ? 誰かがそれを安定と呼んだだけで、僕からしたら横棒というのは下に落ちているわけで」
――確かに安定は、あとから見たら落ちているのかもしれない。
「そう。ただ、勘違いしちゃいけないのは、下に落ちるっていうことが、進化してないということではないんですよ。下に落ちるのも、次に上がるための変化かもしれない。上がるために、落ちることが必要なこともある」
――今は谷だから、次はこういう山にしようというイメージがあるということ?
「それがイメージできたらすごいけどね。大抵は自分が今から谷に向かっていますって受け入れられるものではない。トンネルをくぐっていて、それが山なのか谷なのか、いつ抜けられるかもわからない。でもなんとか、その真っ暗なトンネルを抜けたくて必死に進むわけですよ。大事なのは、その辛い時期を残念と思うのか、自分にしかできないチャンスだと思うのか、っていうところだと僕は思っている。
辛いことがあったときに、毎回ここまでポジティブにはなれないかもしれない。でも、少しでもこのような前向きな気持で取り組める時間があれば、私たちの成長はより大きな曲線を描くことができるかもしれない。
――腹が立つのにあえて訊くとは。
「自分のイラッとした感情なんて関係ないから。大事なのはそこじゃないでしょ。僕自身は真実しか興味のないタイプなんでね。偽って生きてもしゃーないでしょ」
――慰めてほしい人もいると思うよ。
「自分の心を慰めたいっていう気持ちがわからない。なんでなの?」
――やり切れないから。
「なんでやり切れないのよ? じゃあ駄目な自分がいたとしよう。なんで駄目な自分がいたら駄目なのか? それでいいじゃないですか。まずは自分の能力を知らないと、前に進めるはずがない」
様々な出来事と向き合う必要がある時間は、誰にでもいつか訪れる。どのような出来事であろうと、その際に私たちが向き合っているのは、実は自分自身なのかもしれない。そういう事実から自分の能力を測って次に活かすのだ。
――今日の取材の中にも、役立ちそうな話がいっぱいあった。
「まあ、やっていることはみんなとあまり変わらないんだけどね。結局、みんなが嫌がることを我慢してできるかどうかなんですよ。オレはスーパーマンでもなんでもない。ただみんなが嫌なこともやれるし、夢のためにやりたいことも我慢できる。それを本当に徹底していて、あとは人よりも思いがちょっと強いだけ。その差が結果に現れたりするんですよ」
――少しの差が、大きな結果を生み出すと。
「オレはそう信じているよね。それを信じてがんばっていかなあかん」
思いの強さとそれを支える努力。本田圭佑は、それを少しの差であると表現しているが、その差は日々生じるものであるがゆえにとても大きな差になる可能性を秘めている。私たちは、どこまで目標のために、本当は不要なものを避けることができるのだろうか。
――でも、プロの世界で成功モデルにとらわれる選手が多い中、本田くんは常に自分のやり方を壊し、新たなやり方を模索して創造している気がする。自分のやり方を変えることに不安はない?
「オレが変わろうとしているときっていうのは、なんでもポジティブにやるからさ。ネガティブな要素をどうやってかき消すかということに集中して、良いところだけを見ようとして前に進んでいかないと。未来のことなんていうのは誰にもわからない中で、信念だけが支えになる……でしょう? 必ずきっとうまくいくっていうことを信じて努力するわけなんで。あんまりその……今ここで不安があるとかどうかっていうことも、正直に告白するっていうこと自体が、自分の中にある弱さみたいなものを引き出す可能性があるし。そういうことはする必要がない」
――破壊する時、不安は口に出さないほうがいいと。
「まあ、変えると言っても、基本的に今までやってきたことの延長線上に今がある。自分にとって2013年も、その考え方は大きく変わることはない。細かい要素のところでは、当然ながらトレーニングのやり方が変わった、っていうのはあるけどね。基本的には選手としての本田圭佑っていうのは、あくまでも人間としての本田圭佑に基づいて形成されているから、やり方が変わっても関係ない」
まるで自分に言い聞かせるためだけの言葉にも思えるが、このようなポジティブな思考は絶対に必要だ。ネガティブな思考に支配されているときに立てた計画はすごく保守的であったり、狭い世界の中で生きていることを実感させられるものに終始してしまう。反省はするけど後悔はしない。このスタンスをまずは、大切にしてみようと思った。
「人間って、気が緩んでいないと自分では思っていても、気が緩んでいるものだと思うんです。それをどうやって引き締めるかといったら、もうくどいほど、自問自答するしかないと思っているんですね。大丈夫かと。準備はちゃんとできているかと。くどいほどやれるかどうかが僕はキーポイントだと思っている」
有名な一節ではないだろうか。スポーツ選手ならではの気の引き締め方ではあると思うが、ビジネスマンはあまりこのような自問自答をしないような気がする(ネガティブなときにはしているかもしれないが)。本来、自問自答は目標への到達を測るためにどのような人であっても日々行うべきことなのかもしれない。私は目標を策定し、PDCAサイクルの循環を恒常的なものにし、それらを実現するために自問自答を繰り返したいと思った。
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