獏の檻(道尾秀介)を読んだ感想・書評
- 作者: 道尾秀介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/12/23
- メディア: 文庫
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向日葵の咲かない夏を引き合いに出した帯がとても目立っていたので購入した。向日葵の咲かない夏は、僕が一番好きな道尾秀介の作品で、続きを読みたくなる気持ち悪さと驚きの結末が最高だった。文庫本全体を見ても僕がオススメしたくなる作品の一つになる。
あまり関係ない話が続くので、本書に話を戻そう。本書はある悪夢に囚われた人間が、悪夢や自分が目を背けようとしてきた過去との対峙を描いた作品で、確かに向日葵の咲かない夏のような不気味さがあった。それぞれの人間の独白にも味があって、ミステリーが描き出せる人のエグミを見ることができるだろう。
ただし夢の描写に懐疑的な視線を向ける人がいるのかもしれないと思った。ファンタジー要素の多いものや示唆的な夢は、あまりにもご都合主義的な見方をされることが(最近特に)多い。夢を使った物語の形がとにかく溢れすぎたからだと思う。その点で本書が描く「薬」と「夢」の関係性を読者かどう受け取るのかは大変興味深い。個人的には面白かった。
最初に向日葵の咲かない夏が帯に引用されていることを述べたが、僕はこれはやめるべきだったのではないかと考えている。あまりにも向日葵の咲かない夏が面白すぎたからだ。あそこまで強烈な個性を備えた作品を引き合いに出されると読者の見方がそっちに寄ってしまう。そのようなフィルターは不要だし、編集者や広報の方には作品のイメージを無駄に作らせない何かを期待したいと思った。もちろん難しいのは重々承知なのだが。
○読後のおすすめ
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