※ネタバレ注意
ノートにはそれ以上の使い方が存在する。本書では、ノートを使って知的生産力を高める方法が記載されている。
■クリエイティブな領域でノートを使う
ノートを使う場面は学校の授業のように何かを受動的に学ぶシーンが多いだろう。しかし、他にも様々な場面でノートを使うことは可能である。
例えば映画を鑑賞する場合、自分がとても感動するシーンを目撃したときに、そのシーンと自分が感じたことをメモしてみる。すると、それを記憶するという自分の負担が減るので、メモしたシーンに関して考えるだけの脳のリソースができる。そこでそのシーンを客観的に捉える余裕ができるわけなので、クリエイター目線で、なぜこのシーンにこのような演出をしたのか、なぜ鑑賞者はこのような感情になるのかを冷静に考えることができる。
こうやって物事を主観と客観でわけて抽象的に考えることは、今までの学校教育におけるノートの使い方から発展したノートの使い方である。なぜなら、今までのように単に覚えることをメモしただけでなく、クリエイター目線での演出の意味合いを考えるという発想に応用されたからだ。このように物事を抽象化して考えることは、思考レベルを大きく飛躍させることができる。
■作り手や教え手の目線でメモすれば、一段高い成長を手にできる
先ほど映画の場面でクリエイティブにノートを利用する方法で挙げた例と近しい内容になるが、セミナー受講時のノートの使い方にも応用編がある。それは教え手の目線でノートを書くことである。
セミナーで何かを受講しているということは、何かを学ぼうとしているのだろう。その状態で、わざわざ先生の立場から見たセミナーの内容をメモする必要がなぜあるのだろうか?
その答えは単純で、教えることによる学びは、教えられることによる学びよりも上位に存在するからだ。
つまり、そのセミナーで学びたいことを学んだうえで、そのときにメモした先生の講義内容やその手順、受け手から見た教える際のポイントなどをメモして整理し、それを誰かに実践することで、私たちも教え手の知識を得ることが可能になるのである。
学力が高い学生に「なぜ勉強ができるのか」を問うと、多くの学生が「頭の中で誰かに説明するように学ぶから」と答えるという。このように学習すると、話を聞いているだけだと素通りしてしまう難しい箇所や暗黙知てきな知識にも引っ掛かりができて、学習することが可能になる。
かなり実践しやすい内容なので試してみる価値はあるだろう。
■能動的なメモによって得られること
これまでに紹介してきたメモ術によって得られることは大きく二つある。
①能動的にメモする姿勢
これまで学校教育におけるメモ術は、単に板書するだけのことに過ぎなかった。記憶のためのツールでしかなく、それなら電子媒体を使った方がよっぽど良い効果を発揮する。
本書で提唱されているノート術は、記憶するためにノートを使うのではなく、人にしかできない知的生産をするためにノートを使う。そのため、内容を瞬時に理解して、主観と客観の情報の切り分けを行ったり、疑問や質問をその場で考えながらメモする必要がある。つまり、これまで以上に能動的に頭とノートを使っていく必要があるのだ。
②思考スピードの上昇
このようにして能動的にノートを使った結果、自然と能動的に思考するようになれるし、情報の取捨選択レベルが向上する。単に言われていることを理解する脳から、それを受けて発想する脳への進化し、常にそれを提供できるスピード感が身につくのだ。
このようにノートは自分の知的生産力を高めることができる素晴らしいツールである。本書を読んで、より高いレベルで思考する術を知ることができた。