※ネタバレ注意
僕は本書を読んでいて、うつ病にかかる人の気持ちの移ろいに近しいものを感じた。
劣悪な環境(もしくは本人がそう思う環境)で、必死に闘う人。こんな状態おかしい、と思いながらも周りを見渡せば自分のように負けている人はいないように思えて……何か見えない壁、共同幻想のようなものに押しつぶされてしまう。
そのような環境下で人はどう思うのか。基本的に自己嫌悪と他社否定を繰り返しているのではないだろうか。
それでも自分が、その環境から離れない限り、その状態は続く。そうなると自分がそこにいる意味をうまく正当化しようとすることもあると思う。本書の中でも、このようなプロセスが何度も見受けられた。当たり前かもしれないけれど、このような状態に陥ると本当にきつい。常に吐き気が込み上げていて、頭の中は鈍器で殴られたように重たい。前に進みたいのに歩幅が思ったよりも小さくなる。拭い去れない憂鬱が空気のようにまとわりついてくる。
このような人に手を差しのべるのは非常に勇気がいる。誤った声掛けで、その人の苦しみが増すことに恐怖を感じるからだ。でも、それでも僕は声をかけてあげられる人になりたい。そう思った。
〇読後のおすすめ
全く違った作風なのに、僕はこの小説のことを思いだした。