まず西野さんは、かなり自分が目指している状態を意識して行動する人だと思った。実際に、絵本を描いたり、漫才で劇場をいっぱいにしているのは、テレビに出続けることが芸人として生き残る方法という状態に危機感を覚えたからである。そういう考え方を持つようになると何が変わるのか。西野さんは「目的が定まると情報への感度が異常に高くなる」と述べている。確かに人は数多くの情報の中から自分への関連度が高そうなものだけを抜粋していると言われている。目的を定めることは、自分自身に対して、何が大切な情報かを伝える手段になるのだろう。西野さんは、そうやって収入源をテレビ以外からも得ることで、自分がやりたい仕事にフォーカスする環境を得ている。
そして他人にはないニッチな領域について考え抜くことも提唱されている。これはあくまでも僕の意見だが、ニッチな領域の方が課題にフォーカスしやすいし、何を達成すべきかが明確なのだと思う。それに、そこで課題を解決することができれば、自分に自信と箔がつく。それが信用になって、次の挑戦の機会につながるのだろう。西野さんは、その辺の挑戦へのプロセスもうまく考えていると思う。
本書で最も印象に残っているのは、タモリさんとの議論だろうか。詳しくは割愛するが、戦争を止める方法について二人が話し合ったことが書かれている。そして、西野さんは、その方法について一つの結論を得る。それが「笑っている時や感動している時は引き金をひけない。じゃあ、その時間を長くしてあげればよい」というものだ。すごくシンプルだけど簡単には辿り着けない答えだなと思った。僕なら悲しみの機会を減らすような思考をしてしまいそうだから。でも、そんな僕でもこの考え方に頷けた。ゼロサムゲームで世界は動いていない。きっと喜びで満たす世界を創ることができるという希望がそこにある。