クロイワ・ショウ,兄貴(丸尾孝俊) ロングセラーズ 2009-06-01
それでも、あの人がおすすめするのだからと、本書を紹介してくれた人物への信頼が勝って、読み進めることを決めた。すると、しばらくして本書への印象がガラリと変わった。行間が広く大きな文字は、読みやすさを助けるものなのだと感じた。目がチカチカしてしかたなかった配色も、大事なアニキの格言を読者に印象付けるための戦略なのだと理解できた。内容も素晴らしい。ライトな文体で、これだけ読者に大切なことを学ばせることができるのだから。
本書はお金を手にしたくて必死な大学生が、ちょっとした縁からバリ島に住む日本人の大富豪に弟子入りする話である。特に大きな物語の起伏があるわけではない。それでも彼が経験した大切な要素をぎゅっと絞り込んでまとめているので、大切なことが効率的に頭に入ってくる。
弟子入りしてすぐの彼は、世間一般で言われる金稼ぎの方法を徹底的に試して失敗している。僕なんかからすると、それだけでも十分にすごいと思うのだが、やっぱりそれだけではダメなのだとアニキは言う。
「会社は、その会社を運営する人のもの。株式に投資するのはリスクがある。自分の手で動かせる会社の株式を持つことがリスクを低く保つことにつながる。そして、株式は価値ではなく約束であるうえ、その約束相手は確かなものとは限らない」
実際にアニキは会社を20社以上経営していて、バリ島では憧れの就職先になっているとも記載されていた。つまり、アニキがコントロールしているのは、キャッシュフローだけではない。バリ島の経済や気持ちよく働ける職場環境も含まれているのだ。
なぜここまでの収入基盤を手に入れることができたのだろうか。僕が思った三つの要因を上げさせていただく。
①圧倒的な行動力。アニキは、とにかく行動する。いかなる億劫も気にしないように努めている。億劫とはやっかいで、一度失敗したら次の失敗を誘発する大きな要因になる可能性がある。しかし、その億劫を乗り越えて行動し続ければ、いくつかの失敗は、連続した行動の結果忘れることができるのだという。僕たちが乗り越えなければならないのは、知識の壁ではない。億劫の壁なのだ。
②そもそも論で考えられる力。これは様々な起業家の特性として表れている考え方の基盤なのかもしれない。物事を見つめ、それを徹底的に分解して、本質を見抜こうとする力。これが大事で、アニキもこの考え方をとても大切にしている。大切にしすぎて、地震を鍋で再現したり、一見無謀に見えることにも挑戦しているのだが、それを結果にしてしまうのがすごい。他にも無用なものを徹底的に考えることで、有用なものが、なぜ有用なのかを捉える方法が書かれていて、かなり面白かった。
③信頼を生み続ける力。アニキがバリ島で大富豪になったきっかけは、簡単に言うとノリなのだと思う。詳しくは本書を読んでみてほしいが、バリ島で酒を飲み尽くし、遊び尽くした結果、お金がなくなった。そのタイミングで土地を転売する機会を設けて、大きな儲けを得たのである。これだけ聞くとラッキーな人間にしか思えないのだが、その奥にはアニキが周囲に与える信頼の見返りがあるのだと思う。実際に彼はとにかく人のことを考えている。そして、地域住民や従業員に様々なものを与える。結果的に彼のことを信頼した人がまた集まるのである。
アニキは、儲かるものについて簡潔に述べている。それは、人を豊かにするものだそうだ。そのためにはとにかく顧客の心を読むことと、素早く実践し続けることが大切なのだと何度も述べられている。これからは副業がどんどん仕事の中心になってくる時代だ。それぞれが何をできるのか、徹底的に考え抜いて、行動を起こせば大富豪になるのも遠くないかもしれない。
〇読後のおすすめ
クロイワ・ショウ,兄貴(丸尾孝俊) ロングセラーズ 2009-06-01