例えば、友人との些細な喧嘩から人との付き合いが苦手になり、学校に行けなくなってしまった結果、高校の体育祭から逃げ出してしまった話。大きなイベントだからこそ、不登校から抜け出すチャンスかもしれないと家族が感じているものの、当の本人はそれが更なるプレッシャーになっている雰囲気……僕も味わったことがある雰囲気だからこそ、読んでいて少しお腹が痛くなりました。
この場合、家入さんも、彼の家族も、どちらも悪くないと思うんですよね。お互いが、お互いのことを想って行動した結果、彼の方に強くプレッシャーがかかってしまっただけなんです。結果的に彼は、教室に行くところまで我慢したものの、一限目の鐘が鳴る前にトイレにこもってしまい、窓から逃走を図ります。その後、電車で全く見知らぬ駅まで向かったあと、鼻血と涙でぐっちゃぐちゃに汚れた体操服姿のまま帰宅します。この逃走した瞬間の気持ちを僕は知っています。何度も、自分が壊れる感覚を防ぐために、何も考えずに、今いる場所から逃げ出すことだけを考えて、走ったことがあるからです。彼がどれだけの苦悩を抱えていたのかを理解できるので、思わず涙が込み上げてきました。
その後、彼は完全な引きこもりになりました。当時は、コンビニに行くだけで店員の目線が怖くて仕方なかったそう。元々、人からの評価を気にして不登校になったのに、引きこもりになればますます外に出ることがなくなるので、さらに自分の行動が適切か確認する機会を失うのです。これは不登校の人が陥るひとつのケースだと思います。
しかし、彼が良かったのは、母親に半ば強制的に連れていかれた山田かまちの展覧会で、大きな転機を迎えたことだと思います。それは、芸術との出会い。そして、自己理解の大切さに気づけたことだと思います。何枚もの絵をかくことで、自分が何を考えているのか、何を求めているのかを考える。これはとても大事なプロセスだと思います。自分が社会人になって、多くの時間を仕事に費やすようになってから特にそう思うようになりました。就活でも色んなことを話しましたが、ほとんどは就活用にアップデートされたものでした。今になって、どれだけ素直に想いを語れるかが分岐点だったなと思います。早い段階で素直に自分の想いを語れる、もしくは少なくとも自分の想いを知っている状態でいることが、人生を大きく変えてしまうのだと身をもって実感しています。
彼の人生は、引きこもりから脱しても紆余曲折があります。それでも必死に生きて、ひとつの会社を立ち上げます。現在のGMOペパボです。家族のために、社員のために、社会のためにできることを彼は必死で探しているように思えます。その根底には、壮絶な過去を経て得た教訓があります。
「評価されることは、人が人らしく生きていくために、当たり前に必要なこと」
仕事をしていてメンバーの良かったことに対して評価の言葉をかけることって少なくなったなと思いました。もちろん自分に対してもだし、遠く離れている家族に対しても。今回はあまり書いていませんが、家入さんの家族問題は、なかなか強烈です。それでも大変な時期を支えてくれた家族への感謝の念が溢れています。僕もこんな風に素直に自分の気持ちを表現したいと思いました。
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