本を読むこと-読書から何かを学ぶためのブログ-

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海辺のカフカ(村上春樹)を読んだ感想・書評

 以前に海辺のカフカを読んだとき、僕は大学一年生だった。当時の僕は音楽にドハマリしていて、以前は熱心に読んでいた「本」というものをすっかり忘れていたのだが、なんとなく読み返した夏目漱石の小説でかつての熱を取り戻し、大学生協で偶然見つけた本書を手に取ったのだ。僕はすぐに海辺のカフカの奇妙な魅力に夢中になった。田村カフカの十五歳とは思えないような思考レベル。ナカタさんと星野さんが巻き込まれ・巻き起こす出来事の数々。それらがどのような結末を辿るのかと、僕は常にハラハラした気持ちで読んでいた。今でもこのときの感覚や周囲の情景を簡単に思いだ出すことができるのだから不思議なものだ。

 数年ぶりに本書を読んでみて思った感想は「意味がわからない」だ。これは以前に読んだときと何も感想としては変わらない。一方で、拾い上げることができた登場人物の心理描写がかなり増えたような気がしている。「始まりの石」や「高知の森」に関して、当時の僕はさっぱり意味がわからなかったのだが、今はなんとなく分かるようなことがいくつか出てきた。しかし、僕にはこれを言語化することができない。僕の表現力の乏しさや理解の不足が原因だとは思うが、これを安易に言語化することができてしまうのもいかがなものなのだろうか。物語とは本来、いくつもの出来事や要素が絡み合って出来上がるものだ。それを部分的に切り取って「これはこうだね」と平坦に述べてしまうことに何の味気があるというのだろうか。村上春樹の本に関しては特にだけど、いかにも専門家のような語りの人がたくさんいる(僕もたまにブログでやってると思います。すみません)。結局は文章以上のものを創り出すのは読み手の経験や心理状態なのだから、そこは読み手の意志に任せて気ままに読めばいいと思う。もちろんそこで誰かの意見が欲しい、となったときには上述したような意見がとても貴重になるかもしれない。まずは深い意味合いなど考えずに読むことにチャレンジしていただきたい。

 ここで最後に僕が感じたことを一つだけ書いておくと、本書に登場する人物たちは、多くの物事を素直に受け入れているように思える。何かを拒絶しているようでいて、それに対する実際的な拒絶の行動をあまり取っていない。田村カフカが最初に家出という行動をとったことを除いたらほとんどのことは何かの意志が大きな流れをつくっているようで、それにいくつもの登場人物たちが知ってか知らずか乗っているような感覚がする。これまたこれ以上に言語化することが僕にはできないので、非常に悔しい思いをすると同時に、いつかこれを語ることができればと思う。あとは、ナカタさんのように真摯に生きたいなと思った。彼から多くのことを学んだのは星野青年だけではないはずだ。

 

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