作家の収支(森博嗣)の書評
僕は森博嗣という作家を知らない。
しかし彼が有名な作家であると同時に、小説家という職業について、様々な情報を開示してくれる人間であることは知っていた。
そんな彼が作家のお金周りに関する本を出していたので購入した。
本書はタイトルのとおり、作家の収支について明らかにする新書であるが、適切には森博嗣の収支について明らかにする新書である。
森博嗣は大学で研究職に就く傍ら、「お金がほしい」という明確な理由で小説を執筆している。そんな彼が講談社に小説を持ち込み「メフィスト賞」が確立された。持ち込みが基本的に許されない小説業界では異例なことである。そして彼は小説家になり、様々な小説を定期的に世に送り出し、職業として小説を執筆し続けた。
森博嗣は小説家を完全な職業の一つとして捉えている。実際に彼は一時間に六千字のタイピングが可能であることを把握しているし、これは自分の作業量の理解を示す。なおかつ小説家がどれだけ効率的に稼げる職業であるかも自覚したうえで彼は書き続けている。具体的に彼が稼いだ額も読んでいれば分かるし、彼が「職業」として小説を書いていることに幻滅してしまうかもしれない。が、彼にも小説を書くうえでのプライドやこだわりがあることは読めばわかる。僕としてはこの一点について知れただけでも、本書を読んで良かったなあと思えた。
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2015/12/18
- メディア: Kindle版
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