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桐島、部活やめるってよ(朝井リョウ) 人の行動は一つ一つが周囲に影響を与えている[レビュー]

 朝井リョウの「桐島、部活やめるってよ」を読了したので、その感想を投稿したいと思います。

 

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

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 ※ネタバレを含む可能性があります

 

 本書は第22回小説すばる新人賞を受賞した作品で、朝井リョウの処女作になります。映画化されていて、印象的なCMを流していたことから、一時期話題になった覚えがある方も多いのではないのでしょうか。あのミステリアスな雰囲気を漂わすCMから、ミステリー系統のお話なのだと勘違いしていました。が、それは全く違っていて、高校生の心境に焦点を合わせた青春小説になっています。

 

桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]

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 上述したように本書は高校生の心理描写に焦点を当てている小説です。風景写真ももちろんありますが、それ以上に主観的な心境の変化を地の文を使って表現されています。デビュー当時から朝井リョウの文章スタイルは形成されていたのだなと理解できる一作です。一方でデビュー当時の作品なので、「何者」を先に読んでいた僕は、少し文章に粗さを覚えましたが、特に気になるレベルではなかったと思います。

 

 本書は「桐島が部活をやめること」によって生じるさざ波のようなものが生徒たちにもたらす、いくつかの出来事を短篇としてまとめた本になっています。故に、それぞれのお話は連動しているポイントがいくつもあって、後半になるほどその面白みが理解できるようになっていると思います。

 個人的に一番面白かったのは映画部の前田涼也のお話です。学校に自然と存在しいる(存在してしまう)ヒエラルキーの下位に属していると理解している男子。彼らが自分の信じるもの(映画)を通して、学校で注目を集めることから始まる物語です。正直、桐島との関係性なくないか、と思ったのですが、その後の展開(菊池宏樹)のやり取りで、結果的に関係性が生まれているのでいいと思います(笑) 映画部のお話はこれだけで独立した短篇として読めるものだと思います。文庫本ではかすみの過去の話も読めるようになっているので、尚更彼の短篇に対する注目が生まれていて、朝井リョウは彼に対してとても思いやりがあるように感じました。

 

 もしかすると、本書を読んで若いやつの考えていることを理解したい。なんて考えている方がいらっしゃるかもしれませんが、これだけを読んで理解するのは難しいと思います。なぜなら、本書では高校生の共通認識のような部分はカットされているからです。僕なんて「うわー懐かしい」というような感じで読んでいましたし。ただ、これをきっかけに何か自分の見方を変えることはできると思います。どんな本にも共通していることだと思いますが、読んで終わりではなく、最後は自分の行動を伴わないと何も身につきません。本書で何かきっかけを経て、自分で行動することで理解できるものだと思います。

 これは現在学生で本書を読んで何か影響を受けた人全般にも言えることです。最後に宏樹が残したメッセージ「大丈夫。お前はやり直せる」これは読者に向けたメッセージだと思います。なにか行動を起こそう。そう思わせてくれる小説です。

 

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

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