本を読むこと-読書から何かを学ぶためのブログ-

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『MISSING』 喪失は人の死だけではない[レビュー]

 本多孝好の『MISSING』を読了したので、その感想を投稿したいと思います。

 

MISSING (双葉文庫)

MISSING (双葉文庫)

 

 

※ネタバレを含む可能性があります

 

 私が当初、本書に抱いていたイメージは以下の様なものです。

・いつも古本屋の108円コーナーに並んでいる

・なんか古臭そう

・なんか不気味

 

 うむ。よくよく思い返してみると、中々ひどいと思う(笑)

 固定概念でしか判断してこなかったわけです。というのも、古本屋で無数にある本から、全てに興味を持って購入することなんて、ほぼ不可能で、興味を持たなくする理由が必要だったりするからなんだと思います。

 

 そんな私が本書を購入した理由は単純!大好きな小説家である、伊坂幸太郎3652―伊坂幸太郎エッセイ集―(新潮文庫)にて推薦していたからです。しかも何度も。これは読むしかない。

 実際に読んでみて、この考えは大正解。本当におもしろかった。

 タイトルがMISSINGとされているだけあって、本書のテーマは「喪失」なんでしょう。

「喪失」は近年、臨床心理の世界で注目されている分野で、このテーマにいち早く注目していた本多孝好の先見の明には脱帽せざるをえません。

 この「喪失」は、人の死だけでは表現しきれません。認知症によって失われるもの、物的な消失、その人のキャラ、、、など様々です。本書でも、多様な喪失が描かれており、私はとても驚きましたし、楽しめました。

 文章が非常にシンプルだからこそ、その人のキャラや言動、風景なんかが頭にスッと入ってくるんですよね。見たこともない光景なのに、特別な何かとして自身の頭のなかに今まで記憶として残っていたような、そんな感傷的な気分にさせる文章なんだと感じています。

 個人的には「祈灯」と「瑠璃」が上記の特徴を、上手く表していたので印象に残っています。ぜひ、読んでいただきたい。

 

 私もなにか「喪失」したものはあるのかなあ。なんて考えてみました。

 もちろん山程あって、考えだしたら止まらなくなってしまいそうなんで、すぐにやめてしまいました。ほとんどは喪失だと思っていなかったりするのも、なんとも言えない。

 ただ、そういうものって他の誰かの記憶に残っているのかは別として、自分の中では生きていたりすることって、多いですよね。そして、知らず知らずのうちに自分の人格形成や人生の選択に大きな影響を与えていたりなんかしています。そうやって、回り回って日々の喪失はカタチになっているのかも、なんて思っています。

 本書でも登場人物、特に主人公はなにかを喪失しても、その後に活かして生きようとしている姿が多々見受けられます。私にはこの姿がとても強く見えました。なにかを失っても、それを受け入れて、糧にして生きていきたいなあ。

 

MISSING (双葉文庫)

MISSING (双葉文庫)

 

 

対象喪失―悲しむということ (中公新書 (557))

対象喪失―悲しむということ (中公新書 (557))