メンタリスト DaiGo ダイヤモンド社 2013-08-02
「心理戦略」というと何だか安っぽく聞こえてしまうのは僕だけだろうか? それは多くの人が、そのようなことを望み考えたものの、それを活用できないでいたからだろう。それは、努力不足かもしれないし、良い教材がなかったことに起因するかもしれない。本書に限って言えば、読みやすいうえにエッセンスが凝縮されている。この本を生かすも殺すも自分次第なのだと実感させられた。
本書でメンタリズムの基本は四つだと提言されている。
①観察すること。
相手のことを観察することは心理学の基礎と言えるだろう。ただし、観察しいているだけでは何の意味もない。何のために観察するのか。それは、相手のことを理解し、自分の目的に相手を巻き込むことに他ならないだろう。相手の身なりや言葉の選び方、話題から相手が興味を持ちそうなことを読み取り、会話に繋げるのだ。そして、相手の特徴を可能な限り、メモなどして覚えておこう。以前の記憶を相手も共有していた、という事実は好印象に働く。ちなみに「
LOVE理論」では、その話題を数か月寝かせて、誕生日などのサプライズに用いることで、より強烈な印象戦略を実施することがおすすめされている。これは一見すると恋愛理論特有の攻め方に思えるが、喜びを感じるポイントとしては、恋愛に特化したものでないと考えられる。
②分析すること。
これは①の内容で既に言及している部分が多いので割愛する。
③信頼されること。
結局のところ「信頼される」とは「相手との心理的距離感を詰めること」だと言い換えることができる。ここでよく話題に挙がる心理的テクニックがミラーリングである。相手の取った行動と類似する行動を若干の時間差で実施すると好感を抱きやすくなるというものだ。他にも認知的不協和を利用することが本書では提言されている。認知的不協和は、簡単に言うと自分自身の中で抱える二つの事象に矛盾が見られる場合に、どちらかの事象のもう一方の事象に寄せることで、矛盾を解消しようとする行為だ。よくある例は、いつも優しい人が誰かに激しく詰め寄っていた場合、怒られていた対象の人がよっぽど相手を怒らせることをしたに違いないと自己納得するような行為だ。本書では、自分が率先して相手が予測していた以上のことを話すことで、相手の中でお互いの会話量に差があることを認知させ、同じくらい多くを語ろうとさせることが記載されていた。これにはサービスに応えようとする返報性の法則も取り入れられている。ただし、このようなテクニックは、相手に気づかれないようにする必要がある。相手に意識された段階で、それは意味をもたなくなる。
④誘導すること。
③の最後で述べたことは④と深く関連する。相手に気づかれてしまった時点で、こちらのテクニックに気づかないまま、それでも相手は意識的にその選択をしたと思い込んでいる状態から離れてしまうのだ。これでは意味がない。心理戦略とは意図する方向へ誘導するために様々なテクニックを使用するが、上記の理由から相手にはそのことに気づかれてはならないのだ。
この④誘導することについて、個人的に印象に残ったテクニックがあったので、いくつか紹介したい。
まず話題の選別に関するテクニック。仮に僕が何らかの目的を持って二人で会話をしている場合、僕はその目的に沿った会話をしたい。このような場合は、自分から率先してその話をするべきだ。トークテーマは、与えられたものから広がることが多い。ならば自分からトークテーマの枠を絞ってあげるのだ。これは謝罪するときにも有用なもので、ふとした時に相手が落ち度に気づくよりも、こちらから精一杯謝罪したうえで、対応案について話した方が相手の怒りを抑えやすい。これについては、こんな例も記されていた(完全引用ではないので注意です)。
悪い例:画面の表示速度が大幅に向上しましたが、電池の持ちが悪くなってしまいました。
良い例:少し電池の持ちは悪くなってしまったものの、画面の表示速度を大幅に向上させることが可能になりました。
デメリットを最後に伝えられると不安が増すのだが、メリットを最後に伝えられると、デメリットはそのメリットを活かすためにやむなく生じたものだと納得がつきやすくなるようだ。
同じく行動に関しても率先して自分が仕掛けていくべきだと推奨されている。こちらも最初に取られた行動が暗黙的なルールになりやすいことが理由だという。
これらは本書に記されていることのほんの一部にすぎない。まずは自分にできることから挑戦して、少しずつ自分の戦略の幅を広げてみたいと思う。
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