2017-09-04 崩れる 結婚にまつわる八つの風景(貫井徳郎)を読んだ感想・書評 小説 崩れる 結婚にまつわる八つの風景 (角川文庫) posted with ヨメレバ 貫井 徳郎 角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-03-25 Amazon Kindle 楽天ブックス 全ての短篇に対して言及しているとかなり長くなってしまいそうなので、一つの短篇を取り上げながら、貫井徳郎の小説の面白さについて語ることができればと思う。個人的に最も好きなのが「追われる」だ。結婚相談所などは今も日本の恋愛市場で確実に成長しているが、実際にこのようなストーカー気質の人間が現れたりするのだろうか? しかし、このようなストーカーが現れて、その人が迫ってくるところは物語の筋を読める人間なら簡単に感づいてしまうだろう。ただ、ここで面白い(というか怖い)のは、自分がその人を無下に追いやったことで、本当の犯罪者を呼び込んでしまったことだ。最後のワンシーンでは、登場人物の息遣いが聞こえてきた。暗闇の中で恐怖心を必死で抑えてどうにか逃げ去ろうとする女性の姿が見えた。だからこそ辛くなるし恐怖心が滲み出てくるのだが、それ以上に、この結末までの完璧な物語の構築に感嘆した次第である。 本人の解説にもあるが、書いているうちに短篇の書き方を掴んでいることが、読者目線からでもわかるだろう。ただ、そこで得た短篇メソッドのほとんどが、今でいう「イヤミス」スタイルで、読んでいると何とも言えない気持ちになることが多かった。それ故に夜の時間帯に読むことをわたしは避けていた。なんだか人とのつながりが離れてしまったような錯覚に陥りそうになるからだ。この人とのつながりの希薄化は、近年社会で叫ばれている一つの問題で、この小説内でも希薄化が事件を引き起こしていることが多かったと思う。もしかすると人は誰かを信じられなくなったときに、積み木のブロックのような曖昧なバランスの関係を一つだけ引き寄せようとして、結果的に全体を崩そうとしてしまうのかもしれない。そうやって何かを引き寄せることで、何か変化を起こそうとしているのだ。でも、それが一体何なのかは本人にもわかっていないような、そんな気がした。 ○読後のおすすめ 乱反射 (朝日文庫) posted with ヨメレバ 貫井徳郎 朝日新聞出版 2011-11-04 Amazon Kindle 楽天ブックス 崩れる 結婚にまつわる八つの風景 (角川文庫) posted with ヨメレバ 貫井 徳郎 角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-03-25 Amazon Kindle 楽天ブックス