ここ一年余りの間で流行しているビジネスワードの一つが「フィンテック」だろう。経済について扱っているニュースサイトで、この言葉を見ない日はない。一種のバズワードになってしまっている感は否めないが、この技術が本当に世界を変える可能性を孕んでいることもまた紛れもない事実なのである。
フィンテックという言葉や考え方自体は以前から存在している。ただ、それを具体的に実現する技術や社会の流れのようなものがなかっただけだ。では、なぜ社会にフィンテックを受け入れる・実現する流れが出始めたのだろうか。
それはスマホの存在が大きい。スマホの登場により誰もがアプリを気軽に使える環境ができた。それを活かしたサービスの一分類としてフィンテックのサービスが生まれた。生まれたときからデジタルが身の回りにある世代――ミレニアル世代――は、このようなサービスを積極的に利用する。しかも、どこが出しているサービスなのかを重視しない。どのような効果をもたらすサービスであるのかを重視する。このような環境の変化によって金融機関も対応を迫られることになった。その結果、今までは自前主義で全てを管理しようとしていた金融機関もフィンテック起業と組んで、様々なサービスをスピーディーに生み出すことに取り組み始めた。これがブームの兆しだった。
ただし、上記のフィンテック受け入れのキッカケは基本的に欧米での話だ。日本人もフィンテック企業のサービスを少しずっ利用しているが、欧米ほどの流行は未だにない。それは高齢者による現金主義がいまだに根強いことに起因する。私の身の回りを見てみても、現金を多用する人は多い。社会人になってやっとクレジットや電子マネーを使う人が増えてきたか、と思う程度である。これはフィンテック企業には向かい風だろう。しかも日本の金融市場は制度がとても厳しい。経済市場は国を作る大事な要素なので、それを守るためには仕方ないのだろう。国も制度のあり方をどうすべきか、考えてはいるようだが、制度とは基本的に何かに対応するために生まれる。フィンテック企業は国に対して、次々と提案をしなければならないのかもしれない(失敗すれば大ダメージだし、実際にそのせいで欧米の企業は日本に中々進出できないでいる)。
本書を読んでいればこのようなフィンテックの大まかな背景や既存の事業について知ることができた。今はまだ金融機関と顧客(消費者)をつなぐようなサービスがメインになっているが、今後は更に革新的なサービスが生まれてくるのだろう。なんとなくフィンテックという言葉を使っている方には今のうちに本書を読んで知識として蓄えておくのがよいのではないか。
○読後のおすすめ
ドン・タプスコット,アレックス・タプスコット ダイヤモンド社 2016-12-02
次に具体的な技術について知りたいと感じた人が手にするとよいだろう。
「フィンテック」に並ぶテクノロジー系のバズワードといえば「ディープラーニング」だ。入門書としてはかなり良い一冊。グーグルの技術やそれを活かした事例からディープラーニングを学ぶことができる。