ブログを続けているうちに「思いついたことをもっと上手く人に伝えることができるようになりたい」と思うようになった。そこで二冊の本を僕は買った。一冊目はすでにブログにて書評を投稿している「書きあぐねている人のための小説入門 (中公文庫)」という本だ。小説家が書いた小説家のための一冊で、ブログの文章に内容が直結することはないかもしれないなと思いながらも読了した。しかしこれはこれで良かった。そして残りのもう一冊が本書になる。
本書は、とにかく「わかりやすい文章を書く」ことに焦点を当てている。記者としての経験や他の類似本で参考になりそうな箇所を引用しながら論は進められていく。この本の内容は記者としての職業など関係ない。様々な職業の人に一度は読んでもらいたい文章術の教科書的な本として完成されている。学校で国語に触れる人や論文を執筆する大学生、研修中の新入社員などは、その段階で読んでおくと必ず後の助けになるだろう。以下で僕が特に気になった箇所を箇条書きしていく。少しでも気になる箇所があった方には是非本書を購入していただきたい。目から鱗の作文技術が目白押しだからだ。
・文の語順についての原則。①節を先にし、句を後にする ②長い修飾語は前に、短い修飾語は後にする ③大状況から小状況へ、重大なものから重大でないものへ ④親和度の強弱による配置転換(近い意味合いの言葉を連続させるときには、読み手が意味を取り違える可能性がないかを確認する)。
・テンの打ち方。①長い修飾語が二つ以上あるとき、その境界にテンをうつ ②重要でないテンはうたない(大事なテンの意味合いが薄れてしまうことで、読み辛い文章になってしまう) ③逆順でうつ(僕は――で始まるような文章のこと)。
・漢字とカナは文章が読みやすくなるように使う。一つの漢字に統一する必要は全くない。
・会話体で使用される「が」を統一しない。特に順接の接続詞のように使わるもの。
・一段落で一つの意味の塊となる。その段落で伝えたいことや思想を塊にする(つまり文章は、その思想を表現する必要がある)。
・何でもかんでも過去形にしない。著者や主人公の行動を全て過去形にすると「いかにもデスクで文章を打ち込んでいる感じ」が出てしまう。これの悪いところは、読み手が文章が伝えようとしている「体験」をうまく読み手に届けることができなくなる可能性があることだ。
以上、特に本書から僕が学んだと思ったことをピックアップしてみた。ここに書かれていないことは、すでに無意識レベルで実践していることや、今の僕にはまだ必要ない技術だと思う。また、これは備忘録的に書いているので、本書で提示されている例文は書き記していない。この例文を使った分かりやすい文章の考察がかなり面白いので、気になる方には是非読んでいただきたい。自分が文章を書くときの意識だけではなく、他人の文章を見る目も養われるはずだ。
最後に、「作文の技術」というよりは文章を書くにあたって大事だと思う考えが記されている箇所が、僕の心に響いたので引用して終わりたい。※紋切り型の表現(決まり文句のようなもの)を多用するライターに向けて書かれた文章である。
紋切型を平気で使う神経になってしまうと、そのことによる事実の誤りにも気付かなくなる。たとえば「……とAさんは唇を噛んだ」と書くとき、Aさんは本当にクチビルを歯でギュッとやっていただろうか。私の取材経験では、真にくやしさをこらえ、あるいは怒りに燃えている人の表情は、決してそんなものではない。なるほど実際にクチビルを噛む人も稀にはあるだろう。しかしたいていは、黙って、しずかに、自分の感情をあらわしようもなく耐えている。耐え方の具体的あらわれは、それこそ千差万別だろう。となれば、Aさんの場合はどうなのかを、そのまま事実として描くほかはないのだ。「吐きだすように言った」とか「顔をそむけた」「ガックリ肩を落とした」なども、この意味で事実として怪しい決まり文句だろう。
おっしゃる通りだと思った。本当に大事な表現であるならば、そこには時間をかけて自分が見たもの(=真実)を描くことが大切だ。人間は瞬時に様々なことを考える。自分が「とても興味を惹かれている」と自覚するものに対して、僕たちはその一瞬で、自分が気付かないほどの感情をインプットしているのだ。しかし、僕たちはそれらをぽいっとどこかに投げ捨てて、一般的に広がっている紋切り型の言葉で表現してしまう。文章は時間をかけて一文を生み出すことができる。文章を使えばこのような紋切り型の表現を撤廃することができるのかもしれない。僕はそんな文章が好きだ。一方で、そこまで読み手の意識を引く必要がない文章では、このような紋切り型の表現が効果的かもしれないとも思った。要はどうやって読み手に伝えるのか、書き手が意識することが大切なのだろう。(僕はこれを機に昔の文章を読み返しましたがひどい文章ばかりでした)
○読後のおすすめ
文章術をきたえるために僕が買った一冊である。基本的には、小説を書くための作法や考え方が記されているのだが、単に文章術を鍛えたい人や本を読む視点を鍛えたい人にもオススメすることができる。
上述した書籍の感想文だ。