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本日は、お日柄もよく(原田マハ)を読んだ感想・書評

 

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

 

 

 電車内で頻繁に見かける広告があった。それは他の広告とは何かが違っていて、身動きがとれなくなるまで人が詰め込まれた満員電車の中で、僕の目を引いた。大体の車内広告は仕事に向かう男性・女性を刺激するものばかりだ。その中に小説の広告があるのが意外だった(実は他にも小説の広告はあったのだが、そのとき初めて気が付いた)。それが本書である。読み始めて、車内に本書の広告が設置されている理由が分かった。本書はビジネスマンにおすすめしたくなるお仕事小説だったのだ。

 お仕事小説とあるが、そのテーマはずばり「スピーチ」だ。主人公のこと葉が、片思いをしていた幼馴染の結婚式で出会ったスピーチライターとの関わりを通じて、スピーチが世の中や人に与える影響を描いている。

 物語中でこと葉が出会う人や言葉の数は紹介しようとしてもしきれないので、個人的に興味をもったものを取り上げたい。それはライバルでもあるワダカマが師匠と仰いでいる北原の取り組みだ。人に対して言葉を発するのならば、相手の言葉をとことん聞く必要がある。これはとても大事な考え方だと思う。文中ではあまり述べられていなかったが、僕はこれに加えて姿勢も大切になると思う。相手が話したいことを話すことができる環境を用意して、相手の言葉の背景に何があるのかを知ろうとする姿勢が、だ。人の話を遮って、もしくは相手に自分が考えたコメントを聞かせるためだけに会話をしている、そんな人を僕自身が何度も見てきた。全ての会話においてこれを意識する必要はないが、全く意識しないで大切な場面をやり過ごしてしまってはいないだろうか。

 本書は上述したように、スピーチライターを題材に使用したお仕事小説である。最終的に政治の世界まで巻き込んで、物語を展開させたことには驚かされたが、ストーリー展開自体にはどこか既視感がつきまとう。「既視感」という言葉を使うとあまり良いイメージをもたらさないかもしれないが、これは悪いことではない。大枠のストーリーに既視感があるからこそ、スピーチや小説自体が伝えたいことを読者が吸収しやすくなることもある。もちろん何でもかんでも見たことがあるような展開を見せておけばいいなんてことはないし、内容にも関係があるとは思うのだが、本書ではそれがいい方向に働いているなあ、と思った。

 そういえば僕のゼミの教授もスピーチやプレゼンがとてもうまかった。教授は特別な練習をしていたわけではなかったと言っていた。僕が思うに教授にとっては、絶対にこうだと信じていることを適切に伝える手段を求めた結果だったんだろうな、と振り返っている。あくまでもスピーチの技術だけを盗んでいても、そのようなテクは身につかなくて、本当に自分が話す内容に思い入れがあるからこそ生み出される感情もあるのだと思う。

 本書は自然と瞼が熱くなるようなまっすぐな小説で、これ自体がとても良くできたスピーチのようだった。

 

〇読後のおすすめ

 

まんがでわかる 7つの習慣

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  お仕事に関する物語、お仕事漫画であれば僕はこれが一番好きで、全シリーズを購入している。七つの習慣についてうまくまとめてあるし、お話自体も面白いから何度読み返しても負担にならない。

 

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

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