伊坂幸太郎の「仙台ぐらし」を読んだ感想[レビュー]
※ネタバレを含む可能性があります。
以前に「3652」というエッセイ集を読んで面白かったから、こっちのエッセイも読んでみたいと思い手にとった。
僕は伊坂幸太郎がエッセイで述べていることが、彼の人間性を見事に表していて良かった。彼は面白い小説を次々と発表することを除けば、どこにでもいるような心配症のオジサンなんだと思う。でも、その心配症の部分を上手く小説に消化していて、それを本エッセイでは堪能することができる。
また、同時収録されている短篇小説もあるので、是非読んでいただきたい。彼が東日本大震災で被災し、ボランティア活動をしていた際に出会った若者を取り入れたお話だ。彼が暗い毎日の中で、娯楽の小説に意味を見出せなくなることを考えながらも、こんな時だからこそ楽しい小説を書こうと吹っ切れることができたのは、このように震災を消化できる一作があることも影響しているのではないだろうか。
他のエッセイも基本的に小説のように書かれている。語りベースではなく、伊坂幸太郎自身が主人公として何かを体験するような形だ。気がつけば「ブックモービル」という先ほど紹介した短篇に移行しているので、「あれっ、これエッセイじゃねえ」となること必定です。
伊坂幸太郎は何事にも憂いていしまう自身の性格を憂いているような人間ですが、僕はその性格がすごくいいなあと思っている。
小説家として何事にも真剣に興味を持てることは大切だろうし、何よりもインサイド・アウトの考え方ができることは付き合いやすい人間の一条件だと個人的に考えているからだ。(7つの習慣)
「7つの習慣」で述べられているインサイド・アウトの考え方は、簡単にいうと「人や環境のせいにしないで、自分が変えられることを考える」というもの。
普段アルバイトやグループワークをしていても、意思疎通も図らずに「あれは、この人がしてくれる」とか「あれってこの人がやるんじゃないの」なんて言う人とは働きづらいことなんの。
その点、優しい口調で、仕事の進展を(心配して)確認する人の存在はとてもありがたい。やるべきことの分担や共有がしやすくなる。
伊坂幸太郎はそういう人なんだろうな、と思う。それはエッセイや小説の文章を通じて理解することができる。本書を読むことで伊坂幸太郎の小説をより近くに感じることができるだろう。