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『人魚の眠る家』 多様な考えを育む東野圭吾の新作[レビュー]

 

 東野圭吾の『人魚の眠る家』を読了したので、その感想を投稿したいと思います。

 

人魚の眠る家

人魚の眠る家

 

 

↑あらすじや商品紹介は上記から閲覧できます

 

※ネタバレを含む可能性があります

 

 初めて東野圭吾の作品を購入しました。

 今まではなんとなく、本当に大した意味もなく避けていたのですが、本屋に新刊として並んでいる本作を見つけて買いました。

 初めて読んで「あー……東野圭吾って、こういう作品を書くのか」と思いました。これは勝手にミステリーを想像していたのと、帯のコメントがそれっぽさを演出していたからです。ミステリーじゃなければなんなんだ!という感じですが、これはヒューマニズムとでも言うのでしょうか?(笑)

 「脳死」というキーワードから生まれる様々な感情や人間関係の変化について描いています。ミステリー要素は皆目無いですが、これはこれで楽しめました。

 

 さて、今回、頻出ワードでありました「脳死」ですが、近年は授業でも学ぶ機会のある項目となっています。

 私の場合は中学校・高校の社会(公民)で学びました。しかし、学んだといっても、その内容や考え方について自発的に述べたり、考えたりするようなことは、ありませんでした。では、一体何を学んだのか。それは「脳死」「臓器移植」「安楽死」といった、倫理観を問われるような言葉を覚えよう!ということのみです。

 日本の臓器移植に関する法制度が欧州とは違うことはなんとなく知っていましたが、本作で述べられているようなことは知りませんでしたし、考える時間など、微塵もございませんでした。

 そんな私は本作を通して様々なことを考えさせられました。

 

 そもそも「死」とはなんなんだろうか。私は幼い頃に「心臓の動き」が生死の全てだと考えていました。

 今では、心臓の動きで生死を判定することはできないことは理解しています。それでは一体何をもって死とするのか。

 本作でも、昌和を中心にその問いに対する答えをそれぞれが見つけようとしています。

 動きを体感しやすく、「生」を実感しやすい「心臓の動き」だけでは、命の判定を下せないことは、作中の人物も理解していたことでしょう。

 最終的にそれぞれの人物が下した決断はそれぞれの特徴が表れていました。もしかすると東野圭吾も、この問題について考えているうちにこれだけの考えが出てきて、それを全て出してみようと考えたのかもしれません。

 私には明確な発言ができません。どれだけ考えても、そのような場面に遭遇しないと分からない。が、この問題に対して真っ当に向かい合っているそれぞれの考えに価値はあると思います。少なくとも、本作で出てきた考えには、そのような印象を受けました。

 欧州の制度に無理をして合わせる必要はないと思いますが、そのように考える人の気持も分からないではないです。ただ、相手に無理矢理、意見を押し付けるようなことがなければ多様な考えを持つことは大切だと思います。

 

 私が今回、得た見解の一つは、とにかく合理的に考えること。そして、意見を押し付けることは絶対にしないように注意しようと思いました。

 大きなテーマで考えてきましたが、結局は身近なところから自分を変えていくしかないんだと思っています。結果だけで世界は回っていない。これは私の大好きな漫画「3月のライオン」のセリフです(笑)

 

 

 

 作者の価値観は5章・6章に表現されています。皆さんも是非、読んで考えてみてください。

 

 

人魚の眠る家

人魚の眠る家