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本を読むこと-読書から何かを学ぶためのブログ-

書評依頼お待ちしておりますm(_ _)m ※ネタバレありのブログです。

ジャイロスコープ(伊坂幸太郎)を読了したので、感想や書評[レビュー]

 

ジャイロスコープ (新潮文庫)

ジャイロスコープ (新潮文庫)

 

 

 

 それぞれが読みきりの短編として雑誌に掲載されたお話が六作と、それらのシメとして新たに用意された一作の計七作のお話が集まった短編集になります。

 

 私は、本作を読み進めていて、とにかくその内容に驚かされました。

伊坂幸太郎って、こんな話も書けるんだ!」と何度も思いました。今までに読んでいた伊坂幸太郎著作とは全く違うような、でも、伊坂幸太郎っぽさも要所要所で感じさせるような、ついつい先を読んでしまう、そんな短編集でした。

 

 一部氣になったポイントや面白かった点を細かに述べていきたいと思います。

※ここで記述していない話も面白かったのですが、私が全部について感想を投稿するのが面倒くさいだけなので、あしからず、、、

 

*ギア

伊坂幸太郎って、こんな話も書けるんだ!」と強く思った作品がこちらです。

 登場人物は個性的な人物ばかり、東京は一部壊滅状態。何が起こっているのか分からないが、とにかく自分たちを運んでくれるバスのようなものに乗る、個性的な乗客たち。これから何が起こるんだ!ん、セミンゴ?何そいつ?画像検索したら気持ち悪いの出てくるかな?って、そいつが日本襲ってんの!?なんで、運転手は知ってるんだ?最後何!?

 という感じで、珍しく興奮して読み進めていました、、、(笑)

 伏線なんか関係ない!っていう姿勢が伊坂幸太郎らしくなくいなあ、と思いながらも、とても楽しめた作品だったので、このような作品をもっと世に送り出してほしいなあと思います。

 

*二月下旬から三月下旬

 これは多重人格、もしくは幻覚の症状を抱える主人公と、昔ながらの友人(坂本ジョン)との数年に渡る数少ない日記を基にしたお話でしたね。

 多重人格の症状と本当に存在している人の境界線が定かではなく、普通に読み進めていても、その境界線は最後まで明らかになりません。おそらく、読者は「幻覚をみているのか」とか「いや、坂本ジョンは存在しているのか」ということを考えながら読み進めることになります。

 結局、どれが本当に存在している瞬間なんだ!? と最初は気になりましたが、どちらにしても、文中で語られている出来事は本当で起こってしまっている出来事なんですよね。そう考えると、直接的にその出来事に関与している瞬間の人々は本物なんだろうなあ。それ以外は不明で、そう考え始めると特にこだわりはなくなりました(笑)楽しめたし、それでいかなと。

 

*if

 これは「散らし」がとても巧妙な作品ですよね。

 タイトルと話の切れ目にある英字で完全にパラレルワールドを題材とした作品なんだろうと勘違いさせられました。読者のミスリードを誘う方法が上手い、、、

 この作品からは主人公の成長も確認することができますよね。よくよく考える犯人逮捕に貢献しているだけではなく、道中で困っているおばあさんの手助けもしているんですから。後悔しやすい性質の私には、このようにして人が成長できるんだ、と教示してもらっているような気がして嬉しいですね。

 

*彗星さんたち

 これは伊坂幸太郎お得意のパターンなんですかね?話の構成をつなげることによって何か一つの大きなテーマのようなものが見えるようになる。それを新幹線にまんま例えてしまうところが面白いですね(笑)

 このお話では、新幹線の清掃員さんが主役となっています。私も就職活動で新幹線の清掃をしているスタッフを見かけたときに「短い時間で、あの清潔さを保っているのはすごいなあ」と感心していました。私なんて、どれだけ時間があっても部屋が片付くようには思えません、、、、

 

 この話の中で私が気になる心理描写があったので、取り上げます。

 

子供の頃から、母や姉とは違い、自分の感情を言葉にすることが苦手だった。喋ろうとすると言葉に詰まり、うまく喋れぬことで相手が苛立つのが分かると、余計に喋れなくなる。相手に伝えたい感情は表に出さないほうがマシだと思っていた。

 

 こういうタイプの人って、周囲からはあたかもその人が悪いという風に思われがちではないですか?

「あの人って何考えてるのか分かんない」みたいに。

 もちろん、そのような人と関わるのってエネルギーがいると思うんです。その人が考えていることを察したり、気を使ったりして。そして、そんなことをしている内に避けてしまったりなんかして。私にも経験あります。限りある時間の中で、全ての時間をそのような時間に費やす必要はないですよね。

 ただ、このように表現が苦手な人って、このお話の主人公のように圧力をかけてくる人が身近に存在していて、その人のリアクションに恐怖を覚えてしまって、結果的に表現の仕方を失ってしまっているのではないでしょうか?そして、自分がその圧力をかける役目を演じてしまっているかもしれないという恐れがあります。とくに職場で自身の勤続年数が誰よりも上になってくると、自分ではわからない圧力を無意識に周囲に与えてしまっている可能性があります。これを無くすには普段から傾聴する意識や、決めつけ、偏見の撤廃を行っていく必要があるなあと再確認させられました。

 

 本ブログでは扱っていないお話もありますが、総じて面白い短編集でした。

 〇読後のおすすめ

バイバイ、ブラックバード (双葉文庫)
 

  伊坂作品の中でも、一番好きな短篇集がバイバイ、ブラックバードです。設定自体も面白かったんですが、ちょっとしたやり取りや結末が感情を揺さぶってくれるんです。

 

 

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

 

  伊坂作品の中でも一番好きな長編小説を挙げてみました。伊坂幸太郎を有名にした本作は間違いなく伊坂史上No.1だと思います。