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下町ロケット(池井戸潤)を読んだ感想や書評[レビュー]

 池井戸潤の『下町ロケット』を読了しました。

下町ロケット (小学館文庫)

下町ロケット (小学館文庫)

 

 

 

 この作品は2015年の秋にドラマ化が決定しています。今回はその報道をキッカケにして読むことにしました。池井戸潤の作品は初めてで、どこかお堅いビジネス小説のイメージがあり、少し避けていましたが実際に読んでみると面白かったです。何なら少し泣きました(笑)

 

個人的に面白かったポイントは三つあります。

①個性的な登場人物

②社長としての立場と男としての夢

知財戦略の重要性

 

①について

 池井戸潤の小説に個性的な登場人物が多々いることは流行りのドラマから察していましたが、実際に小説を読み進めると本当に溢れんばかりの個性!

 個人的に一番好きな人物は殿村です。奥手で意見を伝えることが苦手な殿村が相手を攻め立てるシーンや出向先の佃製作所への想いを口にするシーンが大好きです。

 他にも佃に楯突く大企業には、人格が崩壊しているとしか考えられないような人物がたくさん現れます。読んでいて普通にイライラしてしまうのは私が単純なのか、池井戸潤の作家としての凄みなのか、、、、どちらもありそうです、、、、

 

②について

 この点の葛藤は社会人として働いていくうえで常につきまとってしまいそうだなと感じながら読み進めていました。どのようなビジネスマンだって可能ならば常に持っていたい「仕事のやりがい」。佃にとっては、これが研究者としての夢でもあった「ロケットを飛ばすこと(ロケットのキーデバイスを製作すること)」でした。このような仕事のやりがいや夢は持っているべきものだと思いますし、これがビジネスに結びつく可能性も否定できません。実際に佃製作所は二代目が社長職に就いてから売上が大幅に向上しています。これはロケットのバルブシステムが直接売上に直結したものではないにしろ、過去の研究費を制限されながらも良い製品を作り続けた佃の経験が活かされている結果です。

 しかし、ビジネスではロケットの部品のような将来的な利益だけではなく、直近の利益も同時に求める必用があります。なんなら、直近の利益がなければ将来への投資はできなくなってしまいます。一方で、将来への適切な投資がなければ永続的な発展は困難になります。でも、そのような投資は将来の利益に本当になるのかが不透明で周囲の納得を得るのが難しい。佃の目の前に立ちふさがった壁は、どのような会社にでも存在するものでした。このような時に、部下にどのように伝えるのか。小説なんで、なんだかんだ帝国重工とのやり取りを重ねる内に部下の火がついて会社は一体となりましたが、実際のビジネスでは常に煽ってくるような敵など存在しないでしょう。むしろ気づかない内に急所の一発を食らっているケースの方が多々あるわけで、そうなる前に会社の意識を同じ方向に向かせるための伝える技術、せめて自身の所属するチームの意識を統一する力が必用だなと感じました。佃製作所の内部の意見を見ていると、それぞれが家族や特許戦略やら何やらと見ている方向が微妙に違っていることが気がかりで、そのような意識が変われば意見の出し合いは、より生産的になるのではないかなと思います。

 

③について

 近年、国内に限らず世界中で知財戦略の重要性が叫ばれています。どのようなアイデア(ノウハウ)や製品も特許や内部保留という戦略の選択が必用な時代になりました。大企業ならばこの重要性に気づいているのでしょうが、小説内のような中小企業はどうでしょうか。私はその点に詳しくないので、あまり言及できませんが、技術を備えている中小企業が多い日本では、この点についてかなり慎重に考える必用があると実感しました。

 また、就活で新卒の法務採用を増やしてきている企業が徐々に増えてきていますが、技術に詳しい理系に法務職のアプローチを直接的に仕掛けている企業は少ないように思えます。今後、世界で戦っていくには技術に詳しい法務が必ず必用になるので、新卒採用からの枠をどんどん増やしても良さそうな気がします。

 

 

 初めての池井戸潤作品でしたが、涙ありで楽しく読むことが出来ました。オススメです。

 

下町ロケット2~ガウディ計画~(池井戸潤)を読了したので、感想や書評[レビュー] - 本を読むこと。

↑続編についても書いてるんで、よかったら見てください!